例えば、一流企業に入社した人と中小企業に入社した人をその時点で比べたら、明らかに前者の方が羨ましがられます。
私は新卒の時、運良く一流企業とまでは行きませんが誰もが知っている会社に入社できました。
そして出産で会社を退職し、離婚して中小企業に勤めだしたのでその差は良くわかるのですが、一流企業系のメリットは計り知れませんでした。
お給料は高い上に休みが多く、何かとちやほやされます(笑)。勤め先を聞かれてもなぜか誇らしい気持ちになってしまうんですよね〜。自分が偉いわけでもないのに。
一方今いる中小企業は、お給料が低く休みが少なく、名前を言っても知らない人が多いので誇らしい気持ちはあまり持てません。
正直最初はその差に驚き、元同僚が羨ましくてなりませんでした。
しかし、今、思うんです。
もしかしたら中小企業の方が幸せなんじゃないの?って。
これは負け惜しみでも何でもなく、正直な感想です。つまり何を物差しにして人生を考えるかで変わってくるんですよね。
会社人生、と考えれば一流企業の方がいいに決まってますが、生まれてから死ぬまでの人生と考えると必ずしもそうではないわけです。
一流企業は優秀な人が集まっているので、凡人が入社してしまうと相当の努力を要求されます。だから自然と会社に全力投球してしまうわけです。そしてそのうちやり甲斐も出てきてますます会社にハマっていきます。もちろんそこで脱落してしまうケースもありますが…
同期との出世レースも会社にのめり込ませる要因になり、大抵は寝ても覚めても会社のことで頭がいっぱいになってしまうんですね。
残業早出はもちろん、休日仕事持ち帰りは当たり前。でも認められて鼻高々。そういう人がたくさんいました。
で、今、そうした人たちが定年を迎え会社を追われています。
今までずーっと会社を生き甲斐にしてきてしまった人たちは、心の拠り所だった仕事を取り上げられ、若い者に立場を譲り、どんな顔をして机に座ればいいのかわからなくなっているんです。
まあ中小企業でもそこにどっぷりはハマっていた人は同じことになるんですが、大抵は安い賃金でこきつかわれるので会社に愛着がない場合が多いです。
そういう人たちは、プライベートに逃げ場を持っていてそこに癒しを見出しがち。
だから退職時に晴れ晴れとした顔で辞めていくのです。
たくさんのお給料をもらい、会社からチヤホヤされていた一流企業のおじさん。
或る日突然ただの人になってしまうんです。
その時点でものすごい衝撃なので、心を病む人も少なくありません。
頑張ってそこから何か始めようとしても、仕事ほど打ち込めるものはなく、昔の栄光にしがみつきながら老いていくことになるのです。
まあ、そんなケースばかりではないでしょうが、私は最近までこのカラクリに気づきませんでした。
一流企業、中小企業、いずれに勤めていたとしても、老後生き生きしているのは、若い頃からプライベートを大事にしてきた人たちが圧倒的に多い!
だから、人生を会社人生だけで考えてはいけないのだなあとしみじみ思っています。
実はある友達が、お子さんが中小企業に入ったことで嘆き悲しみ、心を病みかけていました。
給料も低く休みも少ない。やり甲斐もないらしい。あの子の人生終わりよ!と。
でも、終わりじゃないんですよね。私たちはそう刷り込まれて育ったので、疑いもなくそう思ってしまうのですが、現実はもっと複雑なんです。
彼女が嘆き悲しむのは、私がしつこく言っているイメージの支配に他なりません。そして母親にそんな風に嘆かれていることこそ、お子さんの最大の不幸なんです。
長い目で見ようよ。
私は今の話を彼女にしました。
彼女はにわかには信じられないようでしたが、
そんな見方もあるんだあ…と険しい表情を緩めてくれました。
そして、とても楽になったと喜んでくれました。
もし、お子さんや親しい人が一流企業に入れなくてもがっかりする必要はまったくありません。
本当です。
お子さんの人生は長いんです。今の会社は人生を保証してはくれません。
会社は会社が生き残ることを最優先するものです。人をどんどん循環させて。
だから会社の罠にハマってはいけないと私は思います。